飲食店でグリストラップを使っていると、「清掃は法律で義務になっているの?」「毎日掃除しないと違反になる?」「清掃業者に頼まないといけない?」と気になりますよね。
結論からいうと、グリストラップの設置や維持管理には、下水道法や自治体の条例・規程などが関係します。ただし、「全国すべての飲食店で、バスケットを毎日1回清掃しなければならない」といった具体的な清掃回数が、一律に法律で定められていると考えるのは正確ではありません。
実際には、店舗の所在地や排水の状況などによって適用されるルールを確認し、設置したグリストラップがきちんと機能するよう適切に維持管理することが大切です。
この記事では、グリストラップの清掃と法律の関係、飲食店が知っておきたい維持管理の考え方について、できるだけ分かりやすく解説します。
グリストラップの清掃は法律上の義務なの?
「グリストラップの清掃は義務ですか?」という質問に対して、単純に「法律で毎日清掃することが義務です」と答えてしまうのは適切ではありません。
グリストラップについては、下水道へ基準に適合しない排水を流さないためのルールや、自治体が定める条例・規程、設置した設備を適切に維持管理するためのルールなどが関係しています。
たとえば東京都では、飲食店などについてグリース阻集器(グリストラップ)の設置が必要であることを案内するとともに、適正な維持管理を求めています。
また、東京都下水道局の「阻集器に関する取扱要綱」では、阻集器について、その機能や性能を損なわないよう適切な維持管理を行うことが定められています。
つまり、飲食店として大切なのは「法律に清掃回数が書かれているか」だけを見るのではなく、グリストラップ本来の機能を保ち、適切な状態で使用することです。
「設置する義務」と「清掃する義務」は分けて考えよう
グリストラップと法律について調べていると、「設置義務」と「清掃義務」が一緒に説明されていることがあります。
ここは混同しやすいところなので、分けて考えてみましょう。
グリストラップの設置には自治体の条例などが関係する
飲食店から出る排水には、調理や食器洗浄などによって油脂が含まれることがあります。
こうした油脂などがそのまま排水管や下水道へ流れると、管内に付着して詰まりなどの原因になることがあります。
そのため、地域の条例や規程、排水の状況などに応じて、グリストラップなどの設備を設ける必要があります。
たとえば東京都下水道局では、油脂など排水設備の機能を著しく妨げたり、設備を損傷させたりするおそれのある物質を含む場合、有効な位置に阻集器を設けることを規程で定めています。
福井市でも、基準に適合しない下水が発生する店舗などでは、下水道法や市の下水道条例に定められた排水基準以下にするため、グリーストラップなどの除害施設を設置して水質基準を守る必要があると案内しています。
ただし、具体的な設置条件は地域や施設によって異なるため、全国すべての店舗にまったく同じ条件が適用されると考えないようにしましょう。
設置しただけでは十分ではない
グリストラップを設置していても、中に食材くずや油脂、汚れが大量にたまったままでは、本来の機能を十分に発揮できなくなります。
そのため、設置後の維持管理も重要です。
東京都下水道局では、清掃を行わないと阻集器の能力が低下するとして、日々の清掃を行うよう案内しています。
福井市も、グリーストラップを設置していても適切な維持管理をしなければ機能が低下し、排水設備や下水道本管が詰まるおそれがあるとして、定期的な点検・清掃を求めています。
「設置したから終わり」ではなく、設置後も正常に機能する状態を維持することが大切なのです。
グリストラップに関係する主なルール
グリストラップを管理するうえでは、ひとつの法律だけを見るのではなく、下水道法や自治体の条例・規程などを確認する必要があります。
下水道法と排水基準
事業場などから公共下水道へ排水するときには、下水道施設や処理に悪影響を与えないよう、一定の基準を守る必要があります。
飲食店では油脂を含んだ排水が問題になりやすいため、グリストラップによって油脂などを分離し、下水道へ流れ込む量を抑えることが重要になります。
ただし、店舗の規模や排水の内容、地域によって適用される条件が異なることがあります。
自治体の下水道条例や規程
実際に店舗を運営するときに特に確認しておきたいのが、店舗所在地の自治体や下水道管理者が定めている条例・規程です。
たとえば東京都では、東京都下水道条例施行規程や「阻集器に関する取扱要綱」があり、阻集器の設置や維持管理について定められています。
一方、ほかの地域では、その自治体の下水道条例などに基づいて排水設備や除害施設に関するルールが設けられています。
そのため、インターネットで見つけた他県・他市の情報だけで判断せず、自店舗を管轄する自治体や下水道管理者の情報を確認することが大切です。
「毎日清掃」は全国一律の法律なの?
グリストラップについて調べると、「バスケットは毎日」「油脂は週1回」「槽内は月1回」といった清掃頻度を目にすることがあります。
こうした数字を見ると、「法律でこの回数が決まっているのでは?」と思うかもしれません。
しかし、自治体などが示している維持管理方法の例と、全国一律の法定清掃回数は分けて考える必要があります。
たとえば福井市では、グリーストラップの維持管理方法の例として、バスケットは毎日1回、油脂は週1回、槽内は月1回などの清掃頻度を案内しています。
同時に、油脂などのたまりが早い場合には清掃頻度を増やす必要があるとも説明しています。
つまり、「○日に1回」という数字だけを守ればよいのではなく、グリストラップの状態に合わせて適切に管理することが重要です。
具体的にどの場所を何日おきに確認すればよいのかについては、清掃頻度の記事で詳しく解説しています。

なぜグリストラップを適切に維持管理する必要がある?
グリストラップの清掃は、単に厨房をきれいに見せるためだけに行うものではありません。
適切に維持管理することには、設備本来の働きを保つという重要な目的があります。
油脂を下水道へ流れにくくするため
グリストラップは、厨房排水に含まれる油脂などを分離して、排水管や下水道へ流れ込む量を抑える設備です。
ところが、内部に大量の油脂や汚れがたまると、油脂を分離する能力が低下する可能性があります。
せっかくグリストラップを設置していても、正常に機能していなければ十分とはいえません。
排水管や下水道の詰まりを防ぐため
油脂が排水管や下水道管へ流れると、管内に付着して詰まりの原因になることがあります。
東京都下水道局も、油脂分を下水へ流すことで排水管や下水道管が詰まる原因になると注意を呼びかけています。
店舗内の排水トラブルだけでなく、下水道側への影響を抑えるためにも、日頃から適切に管理することが大切です。
臭いや衛生上の問題を防ぐため
グリストラップの中に食材くずや油脂を長期間放置すると、臭いが発生する原因にもなります。
飲食店では厨房の衛生管理も重要ですよね。
グリストラップを定期的に確認し、汚れをためすぎないようにすることは、店舗を衛生的に管理するうえでも欠かせません。
グリストラップの清掃は飲食店のスタッフがやってもいい?
「清掃が必要なら、必ず専門業者に頼まなければならないの?」と疑問に思う方もいるでしょう。
日常的なグリストラップの管理について、すべての作業を専門業者へ依頼しなければならないと全国一律に決められているわけではありません。
バスケットにたまった食材くずの回収や、水面の状態確認など、店舗スタッフが日常的に行える管理もあります。
一方で、槽内の大がかりな清掃などについては、自治体が専門業者への依頼を案内しているケースがあります。
たとえば福井市では、維持管理方法の例の中で、トラップ内部や槽内の清掃について専門業者への依頼を案内しています。
設備の構造や汚れの状態によっては、無理に店舗スタッフだけで対応しないほうがよい場合もあります。
清掃業者への依頼そのものが義務とは限らない
グリストラップ清掃については、「業者に頼まないと法律違反になるのでは?」と心配になることもあります。
しかし、日常清掃を含めたすべての作業について、全国の飲食店が必ず清掃業者へ依頼しなければならないという一律のルールではありません。
大切なのは、店舗側で行う日常管理と、専門業者に任せたほうがよい作業を分けて考えることです。
自分たちでは取り切れない汚れがたまっている、排水の流れが悪い、槽内を本格的に清掃したいといった場合には、専門業者への依頼を検討しましょう。
なお、清掃によって回収した油脂や汚れの処理については別のルールが関係するため、単に下水へ流して処分してはいけません。
グリストラップを管理するときに注意したいこと
グリストラップは「掃除さえしていれば何をしてもよい」という設備ではありません。
適切に機能させるためには、使い方にも注意が必要です。
回収した油脂を排水へ戻さない
せっかくグリストラップで分離した油脂を、清掃時に排水へ流してしまっては意味がありません。
浮いている油脂は回収し、適切に処理する必要があります。
回収した油脂や汚泥などの具体的な処理方法については、自治体のルールも確認してください。
油脂を細かくして流す方法にも注意する
東京都下水道局では、グリストラップへばっ気装置などの後付け機器を設置しないよう案内しています。
油脂が撹拌されることで、本来グリストラップで分離されるはずの油脂が排水管や下水道へ流れ出すおそれがあるためです。
また、グリースを乳化・分散させて排水として流すタイプの油脂処理剤についても、使用しないよう注意しています。
「油が見えなくなったから処理できた」と判断せず、グリストラップ本来の分離機能を妨げない使い方をしましょう。
高温・大量の排水にも注意する
グリストラップは、油脂と水の性質の違いを利用して油脂を分離します。
高温の排水や、設備の能力を超える大量の排水が流れ込むと、油脂を十分に分離できない場合があります。
日常清掃だけでなく、厨房からどのような排水を流しているのかにも注意が必要です。

店舗のグリストラップに適用されるルールはどこで確認する?
グリストラップについて迷ったときは、ネットの記事だけで判断せず、店舗所在地を管轄する自治体や下水道管理者へ確認するのが確実です。
自治体のWebサイトでは、「グリース阻集器」「グリストラップ」「除害施設」「排水設備」「事業場排水」などの名称で案内されていることがあります。
確認するときは、次のようなポイントを整理しておくとよいでしょう。
- 自店舗にグリストラップの設置が必要か
- 設置する設備に条件があるか
- どのような維持管理が求められているか
- 自治体が清掃頻度の目安を示しているか
- 回収した油脂や汚れをどのように処理するか
- 専門業者へ依頼すべき作業があるか
特に新しく飲食店を開業する場合や、既存店舗の設備を変更する場合は、自己判断せず事前に確認しておくと安心です。
グリストラップの清掃義務についてよくある質問
グリストラップは法律で毎日掃除すると決まっている?
全国すべての飲食店について「グリストラップを毎日1回清掃する」と一律の回数が法律で定められている、と考えるのは正確ではありません。
一方で、自治体などが日常清掃や具体的な清掃頻度の目安を示している場合があります。店舗所在地のルールを確認し、設備が正常に機能するよう適切に管理してください。
グリストラップを設置していれば清掃しなくてもいい?
いいえ。グリストラップは内部に油脂や食材くずなどがたまる設備なので、設置しただけでは十分ではありません。
汚れを放置すると本来の機能が低下するため、適切な維持管理が必要です。
清掃は必ず専門業者に頼まないといけない?
日常的な管理を含め、すべての清掃を専門業者へ依頼することが全国一律で義務付けられているわけではありません。
店舗スタッフで行える日常管理もありますが、大がかりな槽内清掃などは自治体が専門業者への依頼を案内している場合があります。設備や汚れの状態に応じて判断しましょう。
清掃頻度はどのくらいにすればいい?
バスケット、水面の油脂、槽の底などで汚れ方が異なるため、グリストラップ全体を同じ頻度で掃除するものではありません。
自治体などが示す目安を確認したうえで、実際の汚れ方に合わせて清掃頻度を調整することが大切です。
自分の店舗のルールが分からない場合は?
店舗所在地を管轄する自治体や下水道管理者へ確認しましょう。
地域によって条例や規程、案内されている維持管理方法などが異なる場合があるため、他地域の情報だけで判断しないことが大切です。
まとめ|グリストラップは設置後の適切な維持管理が大切
グリストラップの清掃については、単純に「全国一律で毎日○回の清掃が法律上の義務」と考えるのではなく、設置に関するルール、排水基準、自治体の条例・規程、適切な維持管理を分けて理解することが大切です。
グリストラップは、設置しているだけでは十分ではありません。食材くずや油脂、底の汚れなどを放置すると機能が低下し、排水管や下水道への油脂流出、詰まりなどにつながる可能性があります。
また、具体的な清掃頻度や専門業者への依頼については、自治体が維持管理方法を案内している場合があります。
まずは自店舗を管轄する自治体や下水道管理者のルールを確認し、そのうえで日常的な点検・清掃を続けていきましょう。

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